運命づけられたモデル(スペースコレクション・カー)
ブルーバードと対決することを運命づけられたモデルすなわちコロナの第2弾として、トヨタは35年4月、コロナPT20型を発売する。
2代目コロナの登場である。
発売に先だち、トヨタは『ティーザーキャンペーン』という、日本では初めての事前広告を展開した。
ティーズとは『じらす』こと、つまり顧客の気持ちをじらすことによって前人気を盛りあげる広告手法である。
発売が2ヵ月後に迫った35年2月21日、車体を布で覆い『新しくないのは、タイヤが四つあることだけ』というキャッチフレーズつきの広告が、全国紙にいっせいに掲載された。
手をかえ、品をかえてのティーザーキャンペーンがおよそ2ヵ月にわたってくりひろげられます。
もってPT20型に寄せるトヨタ陣営の期待と、ストップ・ザ・ブルーバードへの執念を知ることができるでしょう。
このじらし作戦は成功しました。
PT20型に対して話題が話題を呼び、千駄ヶ谷の体育館で開催した発表会には、およそ10万人の観客が集まりました。
PT20型は、2代目ではあるが全くのニューモデルにひとしいものでした。
全体にわたって新設計が施されていたが、なかでもスタイル面では後ろに傾斜したセンターピラーがスピード感をたたえ、機構面では足まわりが前トーションバー、後ろカンチレバー式と苦心のあとを見せていた。
そして何よりモダン感覚のスタイルが斬新に映り、まずは新車としての魅力を、十分に具えるでき栄えに見えました。
初代ST10型のテツは二度と踏むまい。
開発に携った誰の心にも、それはおもしのようにのしかかっていた。
慎重の上にも慎重に、細部にわたって検討が加えられた。
だがくるまは設計あるいは製作、検査の段階でどれほど手をつくしても、ユーザーの手に渡ってからでないと不具合箇所が出てこない場合がある。
それがくるまという商品の、むずかしいところでもありました。
2代目コロナは、発売するや前人気を裏書きするように好調な売れ行きを見せた。
だが、安心したのも束の間にすぎなかった。
外観のスマートさはともかく、くるま自体に弱い個所が多すぎたのである。
採用した新機構はとくに弱く、タクシーに酷使されてトラブルが多発した。
美しいが弱いという事実に他社セールスマンの中傷が加わる。
発売から1年も経たぬうちに、コロナは弱い車というイメージがユーザーのコロナ観のなかに定着した。
売れ行きは落ち、ブルーバードとの差がいっそう開いた。
悲運のモデルというよりほかに、このへんの事情を説明する言葉はない。
当初の小型車市場への出遅れがあせりを呼び、初代、2代ともにコロナの登板は失敗に帰したのです。